いいんちょ/PC版vsPS版

えー、やっとPS版を全部クリアしまして、ToHeartオンリーの生活にも一段落つきました。

さて、移植です。もともと18禁のゲームを家庭用ゲーム機に移植する訳ですから、色々と変更せねばなりません。もちろんエッチシーンとかはカットな訳です。
でも、PS版移植にあたり、スタッフの方はToHeartのエッセンスの部分を丁寧に取り出し見事なストーリーにまとめ上げています。おまけも充実しているし。
それで我らがいいんちょもPSに移植されて更なるパワーアップをしております。そこら辺にふれて自分が感じた事などを今回述べさせていただきます。少々おつき合いを。

まず、いいんちょがPSに登場するにあたって何が変わったかというと以下の通り。

1)声が違う
2)エピソードが違う
3)顔が違う

「これだけ読んだら、まるっきり違うみたいやないの!」ってな声も聞こえますが。

1)の声ですが、違うも何も声が付いたのはPS版からです。これは声を当てられた久川綾さんの演技力の素晴らしさによっていいんちょの魅力が非常に引き出されてます。
ToHeart全体で見ると、全体的に良い感じで声が当てられていますが、個人的にはちょっとデッサンの狂った声が無い訳ではありません。
そんな中、久川さんの喜怒哀楽の演じ分けはいいんちょ像を見事に描き出しており、はじめ自分としてはちょっと想像していたより声が低いかな、と思ったのですが、個人的な声質の好みとか越えて非常に説得力があります。
PS版ToHeartの中でも屈指の名演技でしょう。

2)のエピソードに関しては、そんなに大きく違いがある訳ではないのですが、例の三人組を主人公が反省を促すシーンが、現行犯のところに居合わせるようになったり、あかりがいいんちょと仲良くしたがっているというエピソードをきちんと描いたりと、伏線が判りやすく整理されています。自分としては、逆に判りやすくなっちゃって、少し対象年令を下げたかな、という気もしましたが、それよりはやはり移植にあたってのエピソードの入念な推敲作業が感じられます。
もちろんあのエッチシーンはそのまんま入れられる訳はないので、寸止めされておりますが、あの会話は非常にリアリティーがあって、本当に付き合い出した恋人達の会話って、こんなだよねー、って感じです。嬉し恥ずかしってヤツですか。
個人的には、主人公がいいんちょをなぐさめようとして喧嘩別れになってしまう屋上のシーン、ここもPS版になってすっきりと整理されたのですが、ここは多少荒っぽくてもいいんちょの感情の爆発度が高いPC版のほうが好きだったりはします。

それで3)の顔の事です。
いいんちょのイラストを描いている水無月徹氏は割合独特の画風の方ですが、特に
たれ目
ほっぺたからあごに掛けてのライン
口の位置
のデフォルメに味があります。
PC版のいいんちょはその感情表現の豊かさも手伝ってころころと顔が変わります。おすまし顔と照れている顔と横顔から受けるキャラクターの感じはかなり違っていて、実は最初この変化に接した自分は
「なんじゃこりゃ、まるで別人じゃん!絵、下手なんじゃねーの?」
と思ったことは内緒です。
とか言いながらしっかりハマった訳ですが。
一方、PS版のいいんちょはかなりリライトされていて、自分としては水無月氏の味が少し薄まったようにも感じました。
とはいえ、味の部分は感じ方は人それぞれな訳でして、PS版にはPC版に無いニッコリ笑ったいいんちょの絵がありましてこれに転んだ人続出のようです。この笑顔があるからPS版の方が上、という方もいますね。
自分としてはPC版の
「・・・じゃ、買う?」
の時の誘惑いいんちょの小悪魔的魅力にゴロゴロしちゃったりなんかしちゃったりしてますので、あの表情はPC版しか無いので、おあいこです。(さすがにPSの倫理規定では援助交際はマズかったのでしょうね。あの時の表情にあたるイラストがPS版に無い訳ではないのですが、あの照れ&誘いの小悪魔的微笑はPC版ならでは)
でも、キャラクターの同一性という意味では雲泥の差といっても良いものがあります。エピソードと同じくPS版移植にあたって非常に整理されたと言えます。

じゃ、トータルではPS版の方が良いのか、と言いますと、ある時点まで自分にはどうしても納得できない点がPS版にはありました。それは
「でこ」が!PS版のいいんちょは「でこ」が無い!
事です。
あの「おでこ」にもかなりグッときていた自分としては「でこ」属性の低いいいんちょなんて〜、という思いはありました。
具体的に述べましょう、PS版しかお持ちでない方は取り説のキャラクター紹介のいいんちょを御覧下さい。顔の向きのせいもあるかと思いますが、右目近くの顔の輪郭のラインがぐっと凹んでますね?
ところがこの凹み具合が画面上のいいんちょでは甘いのです。すると「でこ」があまり強調されない訳です。「思い出のアルバム」分類で言うところの「ビジュアル」、つまり一枚絵での横顔いいんちょは、PS版は「でこ」具合がキープされつつPC版よりも整理されて、非常に自分的にストライクなだけに、前から見た時のいいんちょの「でこ」属性減少は惜しい、惜しすぎるぜ〜、と思っておりました。

とか言いながらも、せっせとPS版いいんちょのシナリオを繰り返してはぐはぁぐはぁと言ってる自分でしたが、ある時、

「ああーっ、委員長!」

主人公が私服いいんちょに出会ったのと同じ時に、自分も気が付いたのです。
「でこ」が強調されると、相対的に目の位置が下がって見える事になり、強調していない時より結果的に幼く見えます。PC版のいいんちょがデフォルトな自分にとって、久川さんの声が少し低く感じたのもそのせいかも知れません。ですが、この幼く見えるパターンでいくと、私服いいんちょインパクトは恐らく、PS版のいいんちょの時より弱まってしまうのではないでしょうか?
あの時のいいんちょは、いつものいいんちょとデザイン的整合性を合わせつつ、いつもと違ういいんちょを見せて、プレイヤーをドキっとさせねばなりません。そのためにはPC版よりPS版のいいんちょの方が良い訳です。

もちろん、それだけの為にいいんちょがリライトされた訳では無いでしょう。でも恐らくスタッフの方は上記の事も意識してあのシーンを演出された事でしょう。
自分はいいんちょの姿かたちを愛でています。ですがいいんちょの魅力はそのキャラクターとストーリーであり、自分はそれを愛します。
PS版でいいんちょは、そのキャラクターとストーリーをより掘り下げてもらっており、その魅力は新たに輝いているのです。

その事に思い至った自分はPS版いいんちょイラストのテイストを受け入れつつ、スタッフの深い愛を感じたのでした。