攻略本の作り方(2)/攻略本が作れる条件

数字と言うハードル

まずは攻略本の作り方を説明する前に、どうしたら攻略本が作れる状況というものが成立するのかお話しましょう。
攻略本を作る事ができる条件、というのも良く判らないと思いますが、要はビジネス的に採算の合う条件というやつです。

同人誌ならいざ知らず、会社で仕事として攻略本を出すにはどういう条件が揃っていれば良いのでしょうか?
先ほど書いたようにビジネス的に採算が合えばOKな訳です。要は売れれば良い訳です。
とは言うものの売れるか売れないかは結果論。なにがどれだけ売れるか予め判っていたらまず間違えなくあなたは億万長者になれます。
という訳で実際の会社の中では申請書のハンコを上司に貰えれば攻略本が作れます。身も蓋も無いですね。

ここで敢えて申請書という言葉を使いました。ちょっとあなたには耳慣れない言葉かもしれません。
なにかを作るときに必要なものと言ってあなたが思い浮かべたのは企画書ではないでしょうか。
そう、企画を通すためには企画書は必要です。ですが多くの場合、企画書というのは申請書の説明資料として添えて提出されるもので、ビジネスで決済を受けるのは申請書がメインです。

ゲームの話を読みに来たのになんでビジネス書みたいな話を聞かされてなくちゃならないのかって?
まあ、お待ちください。他じゃ絶対読めないようなゲーム業界の話もしますって。

話を元に戻しまして申請書の話です。簡単に言いますと申請書とは、これだけの期間この仕事をするとこの時期にこれだけお金が入りますので、この仕事をしても良いですか?と会社の上司にお伺いを立てるための書類です。
あなたがどんな仕事をするにするにしても、デスクワークをすることになれば1度は書くことになると思います。

あなたは攻略本を出したい。このゲームは凄く面白いし初心者でも楽しめる間口の広さがあって上級者でもやり込めるだけの奥深さがある、キャラクターも大人気。絶対売れますよ!と熱っぽくこのゲームの素晴らしさを上司に語ってみても、上司は「どれだけ売れるんだ?」と内容をすッ飛ばして採算の話を聞いてくるでしょう。んなもん判んねえよ!

そこであなたの熱意を上司にも判る形にする際に必要となるのが申請書な訳です。
とはいえ、いきなり申請書を書くといったって数字の根拠がないじゃ、なかなか判ってもらえません。
そういう訳で今回は、攻略本はどんなとき作れるのか?ビジネス的にOKなのか?というお話です。



攻略本をめぐる数字


では実際問題、攻略本と言うのはどの位売れるものなのでしょうか?
私がいた会社では「10−30の法則」というものがありました。これは攻略本の売れる数についての法則で

「攻略本は基本的にゲーム本体の10%売れる」

というものです。これは経験則で把握した数字でしたが、だいたい当たっておりました。
もう一つの30の方ですが、これは例外処理の場合の数字でして、これは

ロールプレイングゲームの攻略本はゲーム本体の30%売れる」

というものです。
これもまたかなりの確立で当たってました。
余談ですが、この法則の範疇外のジャンルもありました。
それは

ガンシューティングの攻略は売れない」

の法則です。ああああ、あの攻略本は在庫が多かったよなあ。

まあ「精霊機導弾」の攻略本のように、後になって「ガンパレードマーチ」の世界観理解の為に必要と判り皆が古本屋を血眼になって探す、といった例もありますので、要は作り方なんですけれど。
もっとも「精霊機導弾」攻略本も儲かってはいないでしょうが。

次に何冊売れれば良いのかという話なのです。

これは前回お話した事にも関連しますが、まずあなたがゲーム会社の人間なのか出版社の人間なのかによって変わってきますし、ゲーム会社の立場にしてもパブリシティ目的なのかガチガチに利益を狙うのかによって変わってきます。

さらにはロイヤリティ(攻略本を作る権利をあなたにあげますから、攻略本の売上から何パーセントくださいね、という取り決めです。)を何パーセントにするかによっても変わってきます。あなたが大ヒットゲームの権利を持って弱小出版社に独占的に攻略本の権利交渉に行くなら凄いロイヤリティをふんだくることも可能でしょうし、また逆の場合もあります。相場でいうと3%から7%くらいでしょうか。

あと攻略本をいくらにするかという話も関連してきます。双葉社の薄い線で行く手もあればエンターブレインの解体新書シリーズのような分厚い線もある訳で。ここら辺は原価とも関わってきますし。
という訳でかなりケースバイケースですが、自分の会社の場合では大体3万冊売れればビジネス的にOKでした。

ここでお手元のゲーム雑誌をお開きください。攻略本が3万冊売れそうなタイトルを探してみましょう。ということは30万以上売れているタイトルっと、

少ない!

そうなんですね。悲しいかな、現状で確実に攻略本が3万冊売れそうなタイトルというのはあまりありません。結構厳しい状況です。
ですから狙うべきは10万本クラス売れるRPGという事になるのですが、RPGというのは本当に嗜好品で作るのには何かと手間とお金が掛かってしまい10万本では赤字みたいな事になりかねません。というか10万いかないRPGも多いのですが。

とはいうものの悲観的な結論を出してもしょうがないですね。3万冊売れないなら2万冊、2万冊売れないなら1万冊で採算の合うよう努力をする。または3万冊売る努力をすればいいだけの話でして。 まあ、それは先の話。あなたにはゲーム攻略本を作る仕事に就くための作戦として今お話をしているのですから。

取り合えず、攻略本の申請書を書くときはゲームの販売数見込の10%で販売数を見積もりましょう。
ロールプレイングゲーム、またはそれに準ずるゲームの場合は30%までいってもOKです。
そして目標数値は3万冊です。この数字は状況によって変動しますけれど。
この数字は、あなたがゲーム会社を攻略本担当で面接を受ける際にも(直接的では無いにしろ)役に立ってくれると思います。

ただ、流行り廃りの激しいゲーム業界ですので3年後どうなっているかは判りませんけど、少なくとも2001年はそうだったのでした。