攻略本の作り方(3)/編集プロダクションという選択

攻略本が産み落とされる場所

前回前々回と、攻略本を作る作業の話としてはあまり具体的でない話が続いたので、そろそろ攻略本制作の中身の話をしようと思っていたのですが、その前にもう一つお話をしておくべき事がありました。

私がやっていた仕事は攻略本を作る作業ですが、だからといって自分がゲームのことについて文章を書いていた訳ではありません。どちらかというとプロデューサー業に近い作業でした。実はこれは出版社の編集者の方も同じようなものでしてディレクター業に近い作業です。

では、ゲームをやり込んで、画面撮影をして、攻略法を執筆して、開発者にインタビューしてといった、おそらくあなたが考えるゲーム攻略本制作作業というのは誰がやっているのでしょうか?実はこれらの作業をやっているのは編集プロダクションです。これは出版社を経由せずに直接攻略本を作るケースでも同じで、私が編集プロダクションと直接やりとりをしながら攻略本を作っていました。

私はゲーム会社の立場から攻略本を作るという話をしていくつもりなのですが、そこにはゲームについての文章を書くような仕事は出てきません。もしあなたがゲームについての文書を書きたいのだとすると、そういう意味では私の話はあまり役に立たないかもしれません。
という訳で、そんなあなたの為に今回は私の知っている範囲ではありますがゲーム攻略本編集プロダクションの話をしましょう。

編集プロダクションの仕事

編集プロダクションの仕事というのは具体的に本を作る作業です。要は上記の原稿書きの作業とレイアウトから版下作成までをやる訳です。
そういう意味では攻略本作りの中で一番現場の仕事ですので一番きつい仕事とも言えます。仕事量は多いですし「文化祭の前の日」と私は言っていたんですが締め切り前ともなればまず徹夜です。とはいうものの、自分の手がけたものがダイレクトに世の中に出て行くわけですから一番やりがいがあるとも言えます。

編集プロダクションは、進行管理にあたる編集者、記事を書くライター、ゲーム攻略を行うゲーマー(ライターとだぶる事あり)、記事や画面写真のレイアウトを行うデザイナー、画面撮影などのアルバイトなどから構成されています(もちろん会社組織であれば社長とか経理とかもいますが)。 会社の規模では株式会社もあれば個人レベルのところもありますが、大企業と言うのはあり得ません。

一つの攻略本を作るにあたっては、大体編集者1人、ライター1〜2人、ゲーマー1人〜2人、デザイナー1〜2人、アルバイト2〜3人位の人員が投入されます。これは攻略本の厚さやら発売までの納期などによって変わってきますけれど。攻略本を出す出版社としては、なるべくゲームの発売日から日が経たないうちに攻略本を発売させたい訳で、そうすると投入すべき人員が増える訳ですね。
役割としては、編集者がゲーム会社や出版社の要望を聞いてそれを現場レベルに落とし込んだり、本の構成を考えたりといった作業、ライターは本文から腰帯のキャッチコピーにいたるまで文章を作成する作業、ゲーマーはひたすらゲームをやり込んで初心者が躓きやすい点を洗い出しつつ上級者でも気がつかない技を見つけ出す作業、デザイナーはゲーム画面のデータ変換から文章の段落組みまで、本のデザイン全部を行う作業、アルバイトはゲーム画面の撮影から参考資料の使いっ走りまで雑務全般を担当したりします。
ざっと見ても大変な作業ばかりですが、しかしながら編集プロダクションとは物を作る現場の楽しさが一番詰まっている場所でもあって、ゲーム攻略法の原稿チェックに目を通しているとプロデュース業の自分としてはちょっとうらやましくもありました。

ちょっと話がずれますが、攻略本の発売日設定の戦略としては「完全攻略でなくてもいいから早く出す」「遅くても良いから完全攻略する」という二つがあります。私の担当した攻略本の場合、ゲーム本体発売と同日という凄まじいスケジュールか、逆に笑ってしまうくらい遅れるか、両極端が多かったような気がします。
前者の場合はゲームが完成してないのに攻略本を作ると言う綱渡りにどきどきし、後者の場合はいったいどれだけ売れるのかどきどきしていたような。
編集プロダクションとしては前者の場合のほうがストレスは多いでしょうね。


メジャーな編集プロダクション


現在、攻略本は多くの出版社から数多く出版されています。あなたも2冊以上は攻略本を持っているのではないでしょうか。
もしあなたが5冊以上攻略本を持っていたら、是非ページの後ろの方にある奥付(出版社とか発行人とかが書いてあるページ)を見ていただきたいのですが、もしかして編集プロダクションがだぶっていませんか?

実は、ゲームの攻略本を作っているプロダクションというのは案外少ないのです。厳密に調べていた訳ではないのですが、私がお付き合いした編集プロダクションは1回きりでそれっきりになるか、ずっと長いお付き合いになるかといずれかで、長いお付き合いになるのは攻略本創世記からの老舗が多かったのです。

それは、
○ 株式会社キャラメル・ママ
○株式会社キュービスト
○株式会社シービーズプロジェクト
○株式会社超音速
○株式会社ヘッドルーム
といった会社でした。

シービーズプロジェクトは成沢大輔さんがメディアに出る機会も多いので知っている方も多いと思いますが、攻略本を読む上ではあまりこうした編集プロダクションの事を意識していないと思います。ですが、いずれも実力と実績があり日本の攻略本を支えている編集プロダクションです。
もしあなたが攻略本制作の現場に立ちたいと思われるのであれば、こうしたプロダクションの門を叩くのは選択肢の一つとして検討しても良いでしょう。例えばゲーム系のホームページを立ち上げていた人がいきなりフリーのライターを目指すより、まず実績のある編集プロダクションで修行を積むという方が、職業選択としてはずっと現実的であると思います。

もっとも、編集プロダクションへ入ること自体を目的にしちゃ駄目ですよ。大切なのは何になるかではなくて何をするかですからね。